Disturbingなコンテンツ

閲覧注意。心がかき乱されるような内容です。

The Byford Dolphin Accident

突然だが標高・深度と気圧の数値上の関係をざっくり示す。要は深く潜るほど気圧が大きくなるということだ。この話がまた後に出てくる。f:id:JLD:20240210223806p:image

今回紹介するDisturbingなコンテンツは、1983年に起きた「バイフォード・ドルフィン減圧事故」である。この事故を紹介している日本語記事もいくつかあるのだが、どれも似通った説明をしているし分かるようでよく分からない。この事故についてしっかり理解できている人は少ないのではないかと思い、今回は特に分かりやすく説明できるように努めた。

この記事も前回と同様にショッキングな内容を含むものなので閲覧注意。大丈夫な人だけ続きを読んでいってください。

 

バイフォード・ドルフィンとはDolphin Drillingという会社の掘削リグ…といってもよく分からんと思うので写真参照。f:id:JLD:20240211005418j:image

これを使って海底から石油などを取る。事故はこのリグを舞台に起きる。

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事故が起きた現場の図。これを見てもよく分からないと思うので、新たに図を用意した。f:id:JLD:20240211021806p:image

リグ上に2室のチェンバー(Chamber 1, 2)があり、そのうち1室の下部にダイビングベル(Diving bell)が付いている。f:id:JLD:20240211141211j:image

この画像を参照するに、ダイビングベルは海に潜るのに使用し、チェンバーは潜水する作業員たちに作業深度の気圧に慣れさせるために室内を加圧していく役割があるようだ。f:id:JLD:20240211143024j:image

ダイビングベルはこんな感じ。内部も加圧されているため、下部に穴が空いているにも関わらず水は浸入してこない。

さて、事故について説明しよう。作業深度での気圧は9気圧であったので、チェンバー・ダイビングベル内も9気圧に加圧されていた。作業が終わりダイビングベルが作業員と共に引き上げられた後、以下の手順で行う最後の作業があった。

「ベルの扉を閉める→潜水主任がベル内の圧力をわずかに高め、扉を密閉する→接続筒とチェンバー1間の扉を閉める接続筒内の圧力をゆっくりと1気圧に下げる→ベルをタンク系から分離するため、クランプを開く」

※接続筒は、チェンバー1とダイビングベルを繋ぐ部分である

しかし実際には赤字で書いた手順が飛ばされて、チェンバー1の扉が完全に閉まる前にクランプを開いてしまった。

これによりチェンバー外の空気と混ざり急激な減圧が発生、チェンバー内が1気圧へと戻った。空気は気圧の高いところから低いところへ流れるので、元々9気圧であったチェンバー内から外部へ爆発的に空気が移動した。ダイビングベルは吹き飛ばされ外にいた作業員2人を直撃し1人が死亡、1人が重症。

チェンバー内部でも悲劇が起きていた。作業員3人が減圧症で死亡。減圧症とは、気圧の変化により血液中に溶けていた窒素が気泡となり血管を塞いでしまう症状のこと(気圧が大きいほどより多くの物質が溶けるので、深く潜ると過剰な窒素を取り込んでしまう)。また、チェンバー内にいたもう1人の作業員はまさに扉を閉めようとしていたため、閉じかけの扉の隙間(60cm幅)に体が押し込められ、引き裂かれた。

正しい手順の図f:id:JLD:20240212112201p:image実際に行われた手順の図f:id:JLD:20240212112220p:image

作業中のコミュニケーションには拡声器が使われていたが、周りの音がうるさく有効な意思疎通が行えていたかは不明。また、長時間作業による疲れもあったとの指摘もある。

画像検索をすれば犠牲者の遺体が見られる。もし見るのであれば相応の覚悟を決めてから見よう。